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腰痛の治し方 ~ギックリ腰編~
更新日:2020年1月15日

腰痛というと多くの種類がありますが、今回は「ギックリ腰」に特化して書いていきます。
ギックリ腰とは急性腰痛症と呼ばれるもので、その詳細や原因は分かっているという情報もあれば、分かっていないという情報もあります。
その上で、解剖学的な知識と個人的な経験を踏まえ、ギックリ腰の実態をご紹介できればと思います。
ギックリ腰の正体
ギックリ腰のほとんどが胸腰筋膜の損傷です。他にも腰椎椎間関節や仙腸関節が原因で起こることもありますが、私の経験上、圧倒的に胸腰筋膜のダメージが多いように思います。
胸腰筋膜とは、腰周辺の筋肉や臀部の筋肉に連結している膜で、画像の白い部分がそうです。

断面図で見るとこんな感じです。上の画像でいうところの白い部分は後葉にあたります。

断面図を見ると分かると思いますが、多くの筋肉と連結しています。
この胸腰筋膜が、伸長ストレスに対して耐え切れず、損傷してギックリ腰になります。
原因
ギックリ腰の正体が分かったところで、今度は損傷する原因を考えていきましょう。
原因は胸腰筋膜に繋がる筋肉の筋力不足や機能低下、または骨盤の位置関係の問題などが挙げられます。
筋肉の筋力不足・機能低下
姿勢を維持するための脊柱起立筋群が弱っていることにより背中が丸まってしまうケースや、筋肉の機能低下により素早い伸長⇔収縮が出来ず、クイックな負荷に対して反応しきれず胸腰筋膜にダメージを受けるケースがあります。
骨盤の後傾によるハンディキャップ

ギックリ腰になる人は圧倒的に骨盤の後傾型の人が多いです。
骨盤が後傾位にあると、ただでさえ胸腰筋膜には伸張ストレスがかかっている状態になります。
骨盤が後傾位にある人は大殿筋(お尻)やハムストリングス(裏もも)が硬くなっている傾向が強いのでストレッチすることをお勧めします。
ただし、骨盤前傾型が優秀なのかというとそうではなく、前傾型は前傾型で別のリスクがあります。
※骨盤の前後傾に関しては詳しく説明すると長くなりそうなので、別の記事で改めて書きたいと思います。
腹圧が低い
以前こちらの記事でも書きましたが、腰回りは腹圧が高いか低いかで安定性がものすごく変化します。
ギックリ腰だけでなく、その他の原因がハッキリと分からないような腰痛にも関わりが大きいので、呼吸と腹圧に関して理解しておくことが重要です。
ギックリ腰になるシチュエーション
例1:重いものを持ち上げる
ギックリ腰になるシチュエーションとして、重いものを持ち上げる瞬間が一番に思い浮かぶ方が多いと思います。
その時に体にかかる負担がどうなっているかというと、本来であればまずは筋肉がその負荷を受けます。しかし筋肉で耐え切るための筋力と機能が備わっていないと、その負荷がそのまま胸腰筋膜にダイレクトに伝わってしまいます。
また、このシチュエーションでは体の使い方も非常に重要になってきます。
本来であれば、腰を丸めずに股関節の曲げ伸ばしをすることで筋肉が正しく機能しますが、日常から腰を丸めた動作が染みついてしまっているといざという時にも腰を丸めてしまいます。
腰が丸まった状態というのは胸腰筋膜が最大限引き伸ばされている状態なので、その状態で大きな負荷が掛かれば、胸腰筋膜が引きちぎられるような形で損傷するのは至極当然です。
例2:くしゃみでプチギックリ腰
中にはくしゃみをするだけでプチギックリ腰になるような人もいますが、そのような場合には筋力の問題よりも、機能低下の方がウェイトが高いと考えていいと思います。
くしゃみはほんのわずかな刺激なので、その刺激にも耐えられない筋力であればそもそもまともに立てないはずです。
つまり、素早い筋肉の伸長⇔収縮の動作がスムーズに出来ず、モロに胸腰筋膜に刺激が入ってしまっているということです。
また、骨盤の後傾も関与している可能性が高い例にもなります。
骨盤の後傾で何もしていない状態で胸腰筋膜に伸張ストレスがかかっているところに、くしゃみという小さな衝撃がトドメになってしまうパターンです。
予防
ギックリ腰の正体、原因、シチュエーションをご紹介してきました。
ここまでを理解してもらえれば自ずと予防策は見えてくると思いますが箇条書きでいくつか書いていきたいと思います。
・重いものを持つときは下半身で動く&腹圧を意識
・骨盤後傾型の人はお尻や裏もものストレッチをする
・腹式呼吸を心がける
・日常から最低限の運動をして筋力低下を防ぐ
・自分の動作の癖を専門家に見てもらってフィードバックしてもらう(ギックリ腰に限った話ではありませんが)
なってしまった場合の対策
安静にしすぎない
まずは自分の状態を確認しましょう。
慎重に体を動かして、どこに痛みがあってどういう動作が痛みを伴うのか、逆にどのような体勢が楽に感じるのかなど、無理せずにチェックしてみましょう。
そのうえで、安静にしすぎないよう自分が出来る日常動作をなるべく行っていくことが大切です。
イギリスの医学誌に掲載された研究によれば、
①「ベッドでの安静」 ②「治療家による施術を受ける」 ③「できる限り通常の日常生活を過ごす」
の3つのグループで③>②>①の順で回復が早かったというデータがあります。
②に関してはどんな症状に対してどんな施術をしたかもわからないのでなんとも言えませんが、安静にしすぎることで筋肉という天然コルセットを甘やかしてしまう結果になるということが考えられますね。
コルセットは必要?
ギックリ腰の重度によりますが、なるべくコルセットはしたくありません。
コルセットをすることで安心感を得たり、通常よりも負荷に耐えやすくなるのは間違いないですが、これも安静にしすぎることと同様に、筋肉が働かなくなるリスクが高いです。
しかし特例として、コルセットをした方が筋肉が働くケースも存在します。
あくまでも意識をすれさえすれば、ということにはなりますが、腹圧を高めることが苦手な人には腰回りにある程度の圧迫がある方が腹圧をコントロールしやすくなります。
トレーニーがスクワットなどの時にトレーニングベルトを巻く理論と同じです。
腹圧をコントロールできるようになるまで、または意識というアンテナを常に最低限立てることができるようになるまで、コルセットの着脱を繰り返すのはアリかも知れません。
「じゃあ自分は腹圧どうなの?」という方は、理解のある治療家に見てもらうことをお勧めします。
治療家の腕は、施術自体はもちろんそうですが、その人に合った適切なアドバイスが出来るということも非常に重要だと私は思います。
ストレッチは必要?
ストレッチに関しては、安易にするのは危険です。
お尻や裏ももが硬くなってしまっているケースは非常に多いですが、そこを伸ばす際に胸腰筋膜も一緒に引っ張られてしまうことがあるからです。
理論をしっかりと理解した上でストレッチをする分にはいいですが、専門家でない一般の人にはおすすめできません。
こういった補足をせずに、「ギックリ腰になった場合には〇〇のストレッチを」といった情報もあるので気を付けてください。
医療機関に行く必要はある?
第一優先で行く必要はありません。
というのは、医療機関で原因が分かる可能性は10~15%だからです。
原因が分からず湿布を渡されるのがオチ、というのを私はお客様からたくさん聞いてきました。
まずは自力での回復、または信頼している治療家に体を見てもらう(治療家もピンキリなので)。
それでもダメなら自己判断で、といったところでしょうか。
そもそもレントゲンやCT、MRIといった類のものは被爆するので個人的にはおすすめしてません。
そのあたりは人それぞれ考え方がありますので参考程度でいいと思いますが。
(三好基晴著「信じてはいけないのだ病気の迷信」を読んで納得した内容です)
良い治療家の見つけ方はこちらを参照
まとめ
ギックリ腰にも様々な要因がありますが、多くの方が胸腰筋膜の損傷です。
胸腰筋膜の損傷が起きるメカニズムは腰の伸張ストレスによるものになるので、予防として、
・股関節の柔軟性を高めるストレッチ
・適度な運動
・腹式呼吸
などを日常から意識していくことが大切です。
もしギックリ腰になってしまった場合には、安静にしすぎず、無理しない範囲で日常動作を行っていきましょう。
また、適切なアドバイスがもらえる治療家に相談することがおすすめです。
ストレッチに関してはリスクが高いので、解剖学を理解していない方は安易に行わない方が無難でしょう。